公開日:2020/04/27
最終更新日:2021/10/05
裸眼に近い感覚で過ごせるコンタクトレンズは、はじめのうちは気をつけて使っていても、長い間使っているとついつい適当に使ってしまいがち。
けれど、直接目につけて使うものですから、使用方法には気を使う必要があります。
あまりにも長時間使っていたり、つけたまま眠ったりしてしまうと、最悪の場合失明してしまうことも…!
ではなぜ、これらの悪影響が発生するのでしょうか?理由を確認してみましょう。
目の健康に関係するのは「角膜」です
皆さんは「角膜」がどこにあるかご存じですか?目のどこかのパーツ、ということはわかっていても、すぐに「目のこの位置です!」と答えられる人は案外少ないのではないでしょうか。
角膜とは、目の黒目の部分です。人体でただひとつの透明な器官です。黒目の部分は角膜ごしに目の内部が見えている状態です。そのため人によってより黒く見えたり、反対に茶色く、明るく見えたりします。
さて、この角膜には透明であるがゆえの大きな特徴があります。それは「血管がない」こと。血管がないとなにが起こるの?と疑問に思われることでしょうから簡単に解説します。血管がないということは、血液に含まれる酸素を取り入れることができないということです。角膜も人体の一部ですから、酸素がなければエネルギーを生み出すことはできません。
では、角膜はどうやって酸素を取り入れているのでしょうか?答えは「涙」です。裸眼の状態であれば、まばたきをする度に涙が交換され、酸素を取り入れることができます。
つけっぱなしにするとどうなるの?
コンタクトをつけっぱなしにすると、涙の交換がスムーズに行えなくなります。すると角膜が酸素不足になり、不足した酸素を補おうと、本来血管がない角膜に血管が伸びてきてしまいます。これを「角膜血管新生(かくまくけっかんしんせい)」と言います。
恐ろしいことに、血管が伸びてきても痛みを感じることはなく、また、鏡を見たときに自分で「あれ?血管が伸びてる?」と気づくこともほぼありません。眼科医による検査を受けないと症状に気づくことはまずありません。
血管が伸びた状態で放置すると、伸びた血管の周辺が白くにごってきます。さらに黒目の部分がだんだん小さくなり、消えてしまうこともあります。そうなると視力が回復することはありません。
しかし、症状がまだ軽度のうちであれば、目に十分な量の酸素を与えることで血管を流れる血流を枯らすことができます。血流が枯れると血管の線のみが残るようになり、黒目がにごる心配はなくなります。
つけたまま寝るとどうなる?
つけっぱなしのままが危険であることはご理解いただけたでしょう。では、寝ている時にもつけていたり、うっかり外すのを忘れたりしたらどうなるのでしょうか?
うっかりやってしまいがちですが、実はこれこそがとても危険な状態です。
眠っている間は、裸眼の状態でも角膜は酸素不足です。理由は、まばたきが行われず涙の交換がされていないから。
研究によると、ソフトコンタクトレンズをつけたまま眠ると、角膜のむくみ具合を表す肥厚(ひこう)率は7~10%と、裸眼時の2~3倍にも及びます。
通常、角膜がむくむと角膜内皮細胞がポンプのように水分を角膜の外に排出します。しかし、加齢やコンタクトレンズの長時間装用などによるダメージで角膜内皮細胞(かくまくないひさいぼう)の数が減少すると、水を排出するポンプ機能が正常に働かなくなります。こうなってしまうと角膜が白くにごってしまい、視力が大幅に下がってしまいます。さらに白濁は見た目からもわかるため、外見にも大きな影響を及ぼします。
ただでさえ低酸素状態になる睡眠中に、コンタクトレンズをつけっぱなしにして眠ってしまったら、瞳へのダメージは計りしれません。絶対に行わないよう、横になる前に必ずレンズを外すクセをつけましょう。
1日の装用時間を守りましょう
角膜内皮細胞の減少スピードをできるだけ遅くするためにも、1日の装用時間を守ってコンタクトを使い、メガネもあわせて使うようにしましょう。近年はより多く酸素を通す製品が販売されていますが、目には少なくない負担がかかっています。
酸素透過性能が高いハードレンズやシリコーンハイドロゲルレンズでも、1日の装用時間は最長でも16時間と言われています。それよりも性能が劣る従来素材のソフトレンズは12時間、カラコンであれば8時間が限度と言われています。それ以上つけることがないよう、普段からメガネを持ち歩くことが重要です。